子どもに熱が出ると、体温の数字そのものを危険の大きさと結びつけて、「39℃も出たらすぐに手を打たなければ」「まず解熱剤で早く下げたほうがいい」と考えられがちです。けれども日本小児科学会の「こどもの救急(ONLINE-QQ)」や関連する学会のガイドラインでは、判断の中心は体温の高さそのものではなく、月齢と全身の様子(機嫌・水分がとれているか・呼吸・顔色)に置かれています。ここでは、発熱の基本的な考え方、家庭でのケア、そして受診や救急を考える目安を、公的機関と学会の整理をもとに順番に見ていきます。
この記事の結論(先に整理)
- 判断のいちばんの手がかりは、体温の数字よりも「全身の様子」です。同じ39℃でも、水分がとれて機嫌がまずまずなら家庭で様子を見られることが多く、ぐったりして水分もとれない場合は受診を考えます。
- 生後3か月未満の発熱は例外です。月齢が低いほど重い病気が隠れていることがあり、この時期に熱が出たら自己判断で様子を見ず、早めに医療機関へ連絡します。
- 家庭でのケアの中心は「水分補給」と「過ごしやすい環境づくり」です。解熱剤は熱を平熱まで下げるための薬ではなく、つらさをやわらげる目的で使われます。
- けいれんが5分以上続く、意識が戻らない、呼吸の様子がおかしい、初めてのけいれんといった場合は、迷わず救急を考えます。
- 夏は突発性発疹や夏かぜ(ヘルパンギーナ・手足口病など)で高い熱が出やすい時期です。熱の高さだけでなく、のどや手足の症状、全身の様子とあわせて見ていきます。
そもそも「発熱」とは?何℃からが目安
一般には37.5℃以上を発熱、38℃以上を高熱の目安とすることが多いとされています。ただし子どもの平熱は大人より0.5〜0.6℃ほど高めで、午前は低く午後から夕方に高くなるといった日内の変動もあります。ふだんの平熱を知っておくと、「その子にとっての高い・低い」が判断しやすくなります。
大切なのは、体温の数字だけを見ないことです。40℃近い熱でも比較的元気で水分がとれている子もいれば、38℃台でもぐったりしている子もいます。学会や公的機関の整理でも、受診の目安は体温の高さそのものより、月齢と全身の状態を軸に組み立てられています。
熱が出るしくみ
発熱は、体がウイルスや細菌と戦うときに起こる自然な反応の一つと考えられています。熱そのものが体を壊しているというより、感染などに対する体の反応として体温が上がっている、という理解が一般的です。そのため「熱の数字をゼロにする」ことよりも、子どもが少しでも楽に過ごせるように支えることが、家庭でのケアの基本になります。
家庭でのケアの基本
1. 水分補給を最優先に
発熱時に家庭でまず心がけたいのが、こまめな水分補給です。熱があると汗や呼吸から失われる水分が増え、脱水になりやすくなります。母乳やミルク、麦茶、経口補水液などを、少量ずつ・回数を多く与えるのが基本です。一度にたくさん飲めない場合は、スプーン1杯ずつでも構いません。
離乳食が始まっている子でも、食欲がないときは無理に食べさせる必要はありません。食事よりもまず水分、と考えておくと安心です。おしっこがいつもどおり出ているかは、水分がとれているかどうかの目安になります。
2. 環境と衣類を「熱の段階」に合わせる
体温が上がっていく途中で手足が冷たく、寒気で震えているようなときは、体は熱を上げようとしている段階です。この時期は無理に薄着にせず、一枚かけて温かくします。
反対に、手足の先まで温かくなり、熱が上がりきって汗をかき始めたら、今度は薄着にして熱を逃がしてあげます。汗をかいたらこまめに着替えさせ、体を冷やさないようにします。室温は過ごしやすい程度に保ち、冷房の風が直接当たらないように調整します。
3. 冷やし方は「本人が心地よい範囲」で
わきの下や首など、太い血管が通る場所を冷やすと心地よく感じる子もいます。ただし、いやがるのに無理に冷やす必要はありません。冷却シートも、心地よさの補助として使うものと考え、鼻や口をふさがないよう貼る位置に注意します。
解熱剤の考え方
解熱剤は、熱を平熱まで下げるための薬ではありません。熱によるだるさや不快感をやわらげ、水分や睡眠をとりやすくすることを目的に使われるものです。したがって「熱が高いから必ず使う」のではなく、熱でつらそうにして眠れない、水分がとれないといったときに、楽に過ごすための手立てとして検討します。
子どもに用いられる解熱成分としては、アセトアミノフェンが一般的とされています。使う量は年齢ではなく体重を基準に決められており、自己判断で増やしたり回数を詰めたりせず、医師や薬剤師から指示された用法・用量を守ることが大切です。市販の解熱薬を使う場合も、月齢・体重・成分を確認し、迷うときは薬剤師に相談してから使います。
生後3か月未満の赤ちゃんには、家庭の判断で解熱剤を使わないのが原則です。この時期は解熱よりも、まず医療機関に相談することが優先されます。また、子どもの発熱に大人用の薬や、成分のわからない薬を使うことは避けてください。
受診を考える目安
体温だけで機械的に決めるのではなく、月齢と全身の様子を組み合わせて考えます。以下は、家庭で様子を見るか受診するかを判断するときの一般的な目安です。
月齢による目安
- 生後3か月未満:発熱(おおむね38℃以上)があれば、様子を見ずに早めに医療機関へ連絡します。日本小児科学会の「こどもの救急(ONLINE-QQ)」も、対象を生後1か月からとしており、低月齢の発熱は慎重に扱う考え方が示されています。
- 生後3〜6か月ごろ:比較的元気でも、初めての高い熱のときは早めの受診を検討します。
- それ以上の月齢:全身の様子を見ながら判断します。機嫌がよく水分もとれていれば、日中の診療時間に受診する形でも間に合うことが多いとされています。
全身の様子でみる受診の目安
次のような様子があるときは、日中でも受診を検討します。
- 水分をあまりとれず、おしっこが半日以上出ていない
- ぐったりして、あやしても反応が乏しい
- 熱が3〜4日以上続く、または一度下がってまた上がる
- 発疹、強い咳、耳を痛がる、はき戻しを繰り返すなど、熱以外の症状が目立つ
- 生後6か月未満で、いつもと様子が違うと感じる
判断に迷うときは、小児救急電話相談(全国共通「#8000」)に電話で相談する方法もあります。地域によって対応時間は異なりますが、受診すべきかどうかの目安を教えてもらえます。
すぐに救急を考えるサイン
次のような場合は、夜間や休日でも救急の対応を考えます。ためらわず、救急や医療機関に連絡してください。
- けいれんが5分以上続く/止まってもすぐに繰り返す/終わっても意識が戻らない
- 初めてのけいれん(短くても、一度は医療機関に相談します)
- 呼吸が速く苦しそう、ゼーゼーして肩で息をしている、顔色や唇の色が悪い
- 呼びかけへの反応が鈍い、ぐったりして起きない、視線が合わない
- 水分がまったくとれず、半日以上おしっこが出ていない
- 激しい頭痛や、繰り返す嘔吐を伴う
熱性けいれんが起きたときの基本
熱に伴うけいれん(熱性けいれん)は、生後6か月〜5歳ごろの子どもにみられることがあります。日本小児神経学会の診療ガイドラインによると、多くは5分以内に自然におさまるとされています。起きたときの基本的な対応は次のとおりです。
- けがをしないよう、安全で平らな場所に横向きに寝かせます
- 吐いたものでのどをつまらせないよう、顔や体を横に向けます
- 口の中に指や物を入れない(舌をかまないようにと物を入れる必要はありません)
- 時間を確認する(何分続いたか、体の動きの様子を覚えておくと受診時に役立ちます)
そのうえで、5分以上続く場合や意識が戻らない場合、初めてのけいれんの場合は救急を要請します。短時間でおさまった場合も、その日のうちに医療機関へ相談しておくと安心です。
夏に多い発熱
夏は、高い熱が出る感染症が増える時期です。熱の高さだけでなく、のどや手足、皮膚の症状とあわせて見ていきます。
- 突発性発疹:おもに生後6か月〜2歳ごろにかかることが多く、突然38〜40℃の高い熱が3日ほど続き、熱が下がるころに顔や体に発疹が出ます。機嫌が保たれていることも多い一方、初めての高い熱で受診につながることの多い病気です。
- ヘルパンギーナ:夏かぜの代表で、突然の高熱とともに、のどの奥に小さな水ぶくれができ、痛みで水分をいやがることがあります。
- 手足口病:手のひら・足の裏・口の中に発疹や水ぶくれが出るのが特徴です。詳しくは関連記事「手足口病の症状と対応」でも整理しています。
いずれも、熱の高さそのものより「水分がとれているか」「全身がぐったりしていないか」を目安にします。のどの痛みで水分をいやがるときは、冷たい麦茶やゼリー状のものなど、飲み込みやすいものを少量ずつ試すのも一つの方法です。夏は発熱に脱水が重なりやすいため、水分補給はとくに意識しておきたいところです。
よくあるギモン
Q. 熱は無理にでも下げたほうが早く治りますか?
A. 解熱剤で体温を下げても、病気そのものの経過が早く終わるわけではないと考えられています。解熱剤は、つらさをやわらげて休みやすくするためのものと理解しておくとよいでしょう。
Q. 熱が高いほど重い病気ですか?
A. 体温の高さと病気の重さは、必ずしも比例しません。判断の軸は数字よりも全身の様子です。低い熱でもぐったりしているときは受診を、高い熱でも元気で水分がとれているときは家庭で様子を見る、という考え方が基本になります。
Q. お風呂に入れてもいいですか?
A. 元気があり、極端に高い熱でなければ、短時間で温まりすぎない範囲の入浴は差し支えないとされることが多いです。ぐったりしているときや悪寒が強いときは控え、体をふく程度にとどめます。
おわりに
子どもの発熱でいちばんの手がかりになるのは、体温の数字ではなく、水分がとれているか・機嫌や顔色はどうか・呼吸は苦しくないか、という全身の様子です。そのうえで、生後3か月未満の発熱、5分以上続くけいれん、呼吸が苦しそうなときなどは、早めの受診や救急を考えます。判断に迷うときは、小児救急電話相談「#8000」や、日本小児科学会の「こどもの救急」を手がかりにしてみてください。ここで整理した内容が、落ち着いて次の一歩を選ぶための材料になればと思います。
Dr.つのみ|臨床系専門医が執筆・監修しています。
ご利用にあたって(免責事項)
本記事は、公的機関・学会の情報をもとにした一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療・受診の要否を判断するものではありません。お子さんの症状には個人差があり、月齢や経過によって必要な対応は変わります。気になる症状があるときは、自己判断のみに頼らず、かかりつけの小児科や地域の相談窓口(小児救急電話相談「#8000」など)にご相談ください。緊急を要すると感じるときは、ためらわず救急への連絡をご検討ください。
