「毎日うんちが出ないと便秘」「数日出なかったら、すぐに手を打たなければ」と、赤ちゃんの排便は昔から回数を基準に語られがちです。けれども小児の診療ガイドラインでは、便秘は回数だけでなく「便が出にくい」「出すときにつらそうにしている」といった状態で捉えられ、排便のリズムには大きな個人差があると整理されています。この記事では、赤ちゃんの便秘をどう見分けるのか、家庭でどんなケアができるのか、そしてどんなときに医療機関へ相談すればよいのかを、公的な資料をもとにやさしく整理します。
結論から先にお伝えします
先に大切な点をまとめます。
- 「何日出ないと便秘」という一律の基準はありません。判断のポイントは回数よりも、便のかたさと、排便のときのつらさ、そして機嫌や授乳の様子です。
- 母乳で育っている赤ちゃんは、数日から一週間ほど出なくても、機嫌がよく授乳が進んでいれば問題ないことがあります。
- 便秘が起きやすいのは、ミルクへの移行期や離乳食が始まる頃など、食事が変わるタイミングです。
- 家庭でできることとして、おなかのマッサージ、足の運動、綿棒での刺激、離乳食期以降の水分や食事の工夫などがあります。
- 血の混じった便、くり返す嘔吐、おなかが張って苦しそう、ぐったりして元気がない、といったサインがあるときは、様子を見ずに医療機関を受診してください。
以下で、それぞれをくわしく見ていきます。
そもそも「便秘」とは何か──回数より大切なこと
日本小児栄養消化器肝臓学会などがまとめた「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」では、便秘を「便が滞った状態」または「便が出にくい状態」と整理しています。「便が滞った状態」とは排便の回数や量が減っていること、「便が出にくい状態」とは排便に努力や苦痛をともなうことを指します。そのうえで、便秘によって腹痛や、おなかの張り、排便時の痛みなどの症状が出て、診療や治療が必要になった場合を「便秘症」と呼びます。
ここで押さえておきたいのは、「◯日出なかったら便秘」という一律の線引きはないということです。赤ちゃんの排便リズムは大人と同じように一人ひとり違い、毎日出る子もいれば、数日に一度というリズムの子もいます。つまり、回数だけを見て一喜一憂する必要はありません。見るべきなのは、便のかたさ、出すときの様子、そして日ごろの機嫌や授乳の進み方です。
月齢によって、便秘が起きやすいタイミングがある
赤ちゃんの便秘は、食事が変わる時期に起きやすいことが指摘されています。月齢ごとに、背景になりやすい要因を整理します。
新生児〜生後数か月
この時期は、授乳のリズムや量がまだ安定していないことが背景になることがあります。母乳やミルクの量が足りないと、便のもとになるものが少なくなり、排便の回数が減ることがあります。授乳のあとの満足度や、体重の増え方もあわせて見ていくとよい時期です。
母乳の赤ちゃんが数日出ないとき
母乳で育っている赤ちゃんは、母乳の吸収がよいため、便として出る量が少なくなり、排便の間隔があくことがあります。数日、ときには一週間ほど出なくても、機嫌がよく、授乳が進み、おなかが張っていなければ、そのリズム自体は心配のいらないことが多いとされています。回数の少なさだけで便秘と決めつけず、赤ちゃんの様子全体を見てあげてください。
ミルクへの移行期・混合のとき
母乳からミルクへ切り替えたり、混合にしたりする時期は、便のかたさや回数が変わりやすいタイミングです。ミルクは種類によって便の様子が変わることもあります。急に便がかたくなり、出すときにつらそうなら、後述する家庭のケアを試しつつ、続くようならかかりつけの小児科に相談してみてください。
離乳食が始まる頃
離乳食の開始は、便秘が起きやすい代表的なタイミングとして知られています。母乳やミルク中心だった食事に固形物が加わることで、便の状態が変化します。水分の摂り方や食物繊維のバランスが整うまでの一時的なものであることも多いですが、赤ちゃんがつらそうなときは工夫の余地があります。
「様子を見てよいうんち」と「便秘を疑ううんち」の見分け方
回数ではなく状態で見る、という視点を具体的にすると、次のように整理できます。
様子を見てよいと考えられる場合
- 数日出ていなくても、機嫌がよく、よく飲み、よく遊んでいる
- 出てくる便がやわらかい、または普通のかたさ
- おなかが張って苦しそうな様子がない
便秘を疑ったほうがよい場合
- 便がコロコロと硬い、または太くて出しにくそう
- 排便のときに顔を真っ赤にして痛がる、泣く、いきんでも出ない
- 機嫌が悪い、母乳やミルク・離乳食の飲みや食べが落ちている
- おなかが張っている
- 硬い便で肛門が切れ、便に少量の血がつく
ポイントは、出ていても「出すのがつらそう」なら便秘の可能性を考えるという点です。逆に、間隔があいていても本人がつらそうでなければ、あわてる必要はありません。
家庭でできるケア
家庭でのケアは、便が出やすくなるよう手伝うものです。症状そのものをなくす方法ではないので、無理をせず、赤ちゃんがつらそうなときにやさしく試してみてください。
おなかのマッサージ
赤ちゃんのおへそのまわりを、手のひらで「の」の字を描くように、時計回りにゆっくりなでます。強く押す必要はありません。授乳の直後を避け、機嫌のよいときに行うとよいでしょう。腸の動きを助ける手伝いになることがあります。
足の運動
あおむけにして、両足を持ち、自転車をこぐようにゆっくり交互に動かしたり、両膝をおなかのほうへやさしく曲げ伸ばししたりします。遊びの延長で無理なく行うのがコツです。
綿棒での刺激(綿棒浣腸)
低月齢の赤ちゃんでは、綿棒で肛門をやさしく刺激する方法がとられることがあります。ベビーオイルやワセリン、オリーブオイルなどを綿棒の先につけてすべりをよくし、綿の部分が隠れるくらいの深さ(目安として綿球の一〜二倍ほど)を入れて、肛門を広げるようにゆっくり回します。初めて行うときや、やり方に迷うときは、かかりつけ医に相談してから行うと安心です。毎回これをしないと出ない、という状態が続く場合は、一度受診をおすすめします。
水分と離乳食の工夫(離乳食が始まってから)
離乳食が始まった赤ちゃんでは、水分をこまめに摂ることや、いも類・野菜・果物・海藻など食物繊維を含む食材を取り入れることが、便の状態を整える手伝いになることがあります。ヨーグルトなどの発酵食品を月齢に合わせて取り入れるのもよいでしょう。なお、離乳食が始まる前の赤ちゃんは、母乳やミルクで水分が足りているため、便秘対策として麦茶や白湯を無理に足す必要はありません。
市販の薬や浣腸を使いたいときは、自己判断ではなく、医師に相談してから使うのが安全です。
医療機関を受診する目安
次のような場合は、かかりつけの小児科に相談してください。
- 家庭でのケアを数日続けても改善せず、赤ちゃんがつらそう
- 硬い便で肛門が切れ、出血をくり返す
- 毎回、綿棒での刺激をしないと排便しない
- 便秘と快便をくり返す状態が一〜二か月ほど続いている
- 体重の増えがよくない、食欲が落ちている
便秘が続いたりくり返したりする状態が一〜二か月続くと「慢性の便秘」と考えられ、きちんとした対応が必要になることがあります。早めに相談することで、悪循環になる前に手を打ちやすくなります。
すぐに受診を考えたいサイン
次のようなサインは、便秘以外の病気が隠れている可能性もあるため、様子を見ずに医療機関を受診してください。
- 激しく泣いて痛がり、おなかが張って硬い
- くり返し吐く、とくに緑色のものを吐く
- いちごジャムのような赤い便や、黒っぽい便が出る
- ぐったりして元気がなく、顔色が悪い
- 生まれてからずっと便が出にくく、最初の便(胎便)が出るのも遅かった
これらは、腸のトラブルなど緊急の対応が必要な状態のサインであることがあります。判断に迷うときは、小児救急電話相談「#8000」に電話して相談することもできます。
まとめ
赤ちゃんの便秘は、回数の多い少ないだけで判断するものではありません。大切なのは、便のかたさと、出すときのつらさ、そして日ごろの機嫌や授乳・食事の様子です。母乳の赤ちゃんが数日出なくても元気なら、あわてる必要はありません。食事が変わる時期に起きやすいことを知っておくと、落ち着いて向き合いやすくなります。おなかのマッサージや足の運動、離乳食期以降の水分・食事の工夫などをやさしく試しつつ、つらそうなサインや気になる症状があるときは、遠慮なくかかりつけ医に相談してください。
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Dr.つのみ|臨床系専門医が執筆・監修しています。
この記事は、赤ちゃんの便秘について公的な資料をもとに一般的な情報を整理したものであり、個別の診断や治療、医師への相談に代わるものではありません。赤ちゃんの様子には個人差があります。気になる症状や判断に迷うことがあるときは、かかりつけの小児科や地域の相談窓口にご相談ください。
【参考にした主な資料】日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児消化管機能研究会「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」/厚生労働省・自治体の乳幼児の排便に関する情報/日本小児科学会関連の小児救急情報(#8000)。
