妊娠中に足がつる・こむら返り|夜のつらさへの対処と「気をつけたいサイン」を医師ママが整理【2026年版】

まずお伝えしたいこと

妊娠中の「足がつる」「こむら返り」のことを調べると、原因や対処法の情報が多く、どれを参考にすればよいのか迷いやすいテーマです。とくに夜中、眠っているときに突然ふくらはぎがつって目が覚めると、痛みと驚きでつらいものです。

「何か悪いことが起きているのでは」「栄養が足りていないのかもしれない」と気になって、不安になる。そうした声は少なくありません。

ここでは、公的機関や研究で示されている考え方をもとに、妊娠中のこむら返りとのつきあい方を順番に見ていきます。不安をあおることも、「気にしなくていい」と言い切ることもしません。最終的な判断は、かかりつけの産婦人科医にご相談ください。

結論先出し

先に要点をまとめます。

  • 妊娠中、とくに妊娠中期から後期にかけて足がつりやすくなることは、多くの妊婦さんが経験するとされています。多くは夜間や明け方に起こります。
  • はっきりした原因は、まだすべてが解明されているわけではありません。血液量の変化やミネラルのバランス、おなかが大きくなることでの姿勢や血の巡りの変化など、複数の要因が重なると考えられています。
  • つってしまったときは、あわてず、つま先を体のほうへゆっくり引き寄せて、ふくらはぎを伸ばすのが基本の対処です。
  • 日ごろの工夫としては、ふくらはぎをやさしく伸ばすストレッチ、こまめな水分補給、足を冷やさないこと、バランスのよい食事などが挙げられます。
  • マグネシウムやカルシウムのサプリメントについては、足がつる回数を減らせるかどうか、研究でもはっきりした結論は出ていません。とり入れるかどうかは自己判断せず、医師に相談してください。
  • ふだんのこむら返りとは違い、片方のふくらはぎだけが腫れる・赤くなる・押すと強く痛む・歩くと痛むといったサインがあるときは、別の状態の可能性もあるため、早めに相談してください。

ここから先で、それぞれをくわしく見ていきます。

妊娠中に足がつりやすくなるのはなぜ

「妊娠してから、急に足がつるようになった」。妊娠中期から後期にかけて、こうした変化を感じる方は少なくありません。なぜ妊娠中に起こりやすくなるのか、はっきりした原因は、まだすべてが解明されているわけではありませんが、いくつかの要因が重なると考えられています。

一つは、ミネラルのバランスの変化です。妊娠中は赤ちゃんへ送られる分も含めて体の中のミネラルの使われ方が変わり、また妊娠後期には体をめぐる血液の量が増えることで、血液中の成分の濃度が変化しやすくなります。こうしたカルシウムやマグネシウムなどのバランスの変化が、筋肉のつりやすさに関わっているのではないかと考えられています。

もう一つは、体の変化による負担です。おなかが大きくなると姿勢が変わり、脚の筋肉にかかる負担が増えます。同じ姿勢が続いたり、運動量が減ったりすると、脚の血の巡りも滞りやすくなります。足の冷えや疲れも、筋肉がつる一因と考えられています。

つまり、こむら返りは「体に何か重大な異常が起きているサイン」というより、妊娠にともなう体の変化のなかで起こりやすくなるもの、と整理できます。だからこそ、原因を一つに決めつけるよりも、できる範囲の工夫を重ねていく考え方が現実的です。

夜や明け方に起こりやすいのはなぜ

こむら返りの多くは、夜眠っているときや明け方に起こります。日中は気にならないのに、横になると起きやすいと感じる方も多いでしょう。

これは、寝ている間は脚を動かすことが少なく、血の巡りが滞りやすいこと、また布団の中で自然と足首が伸びた姿勢(つま先が下を向いた状態)になりやすいことなどが関係していると考えられています。足首が伸びた状態が続くと、ふくらはぎの筋肉が縮こまり、ちょっとしたきっかけでつりやすくなります。

夜のこむら返りで睡眠が妨げられると、日中の疲れにもつながります。妊娠中の睡眠については、別の記事(妊娠中の睡眠|眠れない夜を悪化させない医学知識)でも整理していますので、あわせて参考にしてください。

つってしまったときの、その場での対処

実際に足がつってしまったときは、痛みであわててしまいがちですが、落ち着いて筋肉をゆっくり伸ばすのが基本です。

ふくらはぎがつったときは、つった側のひざを伸ばしたまま、つま先を手で持って、ゆっくりと体のほうへ引き寄せます。手が届きにくいときは、タオルを足の裏にかけて両手で手前に引くと伸ばしやすくなります。痛みが強いあいだは無理に力を入れず、痛気持ちいいと感じる範囲で、じわじわと伸ばしていきます。

立てる状態であれば、壁に手をついて、つった側の足を後ろに引き、かかとを床につけたままふくらはぎを伸ばす方法もあります。伸ばしたあとに、ふくらはぎをやさしくさすったり、温めたりすると、筋肉がゆるみやすくなります。

あわてて急に強く引っぱると、筋肉を痛めることがあります。あくまでゆっくり、が基本です。

ふだんからできる工夫

足がつる回数をゼロにする確実な方法があるわけではありませんが、起こりにくくするために日ごろからできる工夫がいくつかあります。

ふくらはぎのストレッチ

寝る前に、ふくらはぎをやさしく伸ばす習慣をとり入れると、筋肉がやわらかくなり、血の巡りも整いやすくなります。壁に手をついて行うストレッチや、座って足首をゆっくり回す・つま先を手前に引く動きなどを、痛みの出ない範囲で行います。妊娠の経過が順調な場合の運動については、無理のない範囲で続けてよいとされていますが、不安があるときは健診のときに相談してください。

水分をこまめにとる

体の水分が不足すると、筋肉がつりやすくなると考えられています。一度にたくさんではなく、日中からこまめに水分をとることを心がけましょう。

足を冷やさない・血の巡りを助ける

足の冷えは筋肉がつる一因と考えられています。靴下やレッグウォーマーで足元を温めたり、寝る前に足首を回したり、ふくらはぎをさすったりして、血の巡りを助けましょう。長時間の立ちっぱなし・座りっぱなしを避け、こまめに体勢を変えることも役立ちます。

寝るときの姿勢

布団の中で足首が伸びきった姿勢が続くと、ふくらはぎが縮こまりやすくなります。横向きで休む、足元にクッションを置くなど、自分が楽な姿勢を探してみてください。

マグネシウムやカルシウムは足がつるのに関係する?

こむら返りというと、「マグネシウム不足」「カルシウム不足」という話をよく見かけます。たしかに、これらのミネラルは筋肉の働きに関わっています。

ただし、サプリメントとしてマグネシウムやカルシウムをとることで、妊娠中の足がつる回数を減らせるかどうかについては、研究でもはっきりした結論は出ていません。妊娠中のこむら返りに対する対策をまとめた研究のレビュー(コクラン・レビュー)では、マグネシウム・カルシウム・ビタミン類などの飲むタイプの対策が、足がつるのに対して効果的で安全といえるかどうかは、現時点の研究からははっきりしないとされています。研究の数が少なかったり、評価の方法がそろっていなかったりすることが理由です。

ですから、「サプリをのめば足がつらなくなる」と決めつけるのは早く、まずは食事のバランスや先に挙げた生活の工夫から考えるのが現実的です。マグネシウムは海藻・ナッツ・大豆製品・玄米など、カルシウムは乳製品・小魚・小松菜・大豆製品などに含まれます。ふだんの食事のなかでとり入れていくのがよいでしょう。妊娠中の食事全体の考え方は、別の記事(妊娠中の食事で本当に気をつけるべきもの)でも整理しています。

サプリメントでミネラルを補おうと考えるときは、自己判断で量を増やさず、健診のときなどに医師・薬剤師に相談してください。とりすぎがかえって体の負担になる成分もあります。なお、つわりで食事が思うようにとれない時期の工夫については、別の記事(妊娠初期のつわり|乗り切り方と受診を検討すべきサイン)も参考にしてください。

こむら返りと区別したい、気をつけたいサイン

こむら返りの多くは、つったあとに伸ばせばおさまり、しばらくすると痛みも引いていきます。一方で、ふだんの足のつりとは様子が違う場合には、念のため早めに相談してほしいサインがあります。

たとえば、片方のふくらはぎだけが腫れている、赤くなっている、熱をもっている、押すと強く痛む、歩くときにふくらはぎが痛む、といったサインです。これらは、足の血管に血のかたまりができる状態(深部静脈血栓症)でみられることがあるサインとして知られています。妊娠中は、妊娠していないときに比べてこうした状態が起こりやすくなることが報告されています。

こむら返りそのものは多くの場合、心配のいらないものですが、上のようなサインがあるときや、痛みやしびれが長く続くとき、いつもと違うと感じるときは、自己判断で様子を見すぎず、かかりつけの産婦人科に相談してください。気になるサインを早めに相談しておくことが、安心につながります。

Dr.つのみ|臨床系専門医が執筆・監修しています。

ご利用にあたって(免責事項)

本記事は、一般的な医学情報の整理を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や対処の必要性には個人差があります。実際の対応にあたっては、かかりつけの産婦人科医にご相談ください。記事の内容は公開時点の情報にもとづいています。

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