「のどが痛くて熱が出たら溶連菌かもしれないから、念のため抗菌薬を出してもらう」「熱が下がって元気になったら、薬は残しておいて登園していい」といった言い方を、園や家庭で耳にすることがあります。実際には、厚生労働省の「抗微生物薬適正使用の手引き」は検査でA群β溶血性連鎖球菌が検出されていない急性咽頭炎に抗菌薬を投与しないことを推奨し、検出された場合には内服10日間を示しており、日本小児科学会は登校・登園を「適切な抗菌薬による治療開始後24時間以降」と整理しています。この記事では、溶連菌感染症について、検査と抗菌薬の考え方、飲みきる期間の位置づけ、登園・登校を再開できる日、家庭内での広がり方を、公的な資料に沿って整理します。
結論から先に
- のどの痛みだけでは診断できません。厚生労働省の手引きは、迅速抗原検査または培養検査でA群β溶血性連鎖球菌(GAS)が検出されていない急性咽頭炎には抗菌薬を投与しないことを推奨しています。
- 登園・登校の線は「解熱」ではなく「治療開始からの時間」です。日本小児科学会は、適切な抗菌薬による治療開始後24時間以内に感染力はなくなるため、それ以降は登校(園)が可能としています。
- 保育所の登園のめやすは24〜48時間です。こども家庭庁のガイドラインは、溶連菌感染症の登園のめやすを「抗菌薬内服後24〜48時間が経過していること」としています。
- 飲む期間と、登園できる日は別の話です。GASによる急性咽頭炎と診断した場合の内服は10日間が示されており、登園できる日が来ても薬の期間は続きます。
- 数週間後の合併症があります。日本小児科学会は、合併症として発症数週間後にリウマチ熱、腎炎をおこすことがあるとし、治療が不十分な場合はリウマチ熱を併発しやすいとしています。
溶連菌感染症とはどんな病気か
国立健康危機管理研究機構(JIHS)は、A群溶血性レンサ球菌感染症をA群β溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)を病原体とする感染症とし、主な感染経路は飛沫感染および接触感染としています。咽頭炎や膿痂疹、猩紅熱などを引き起こします。
咽頭炎の潜伏期間は2から5日で、発熱、咽頭痛、倦怠感、嘔吐などの症状を示します。猩紅熱では特徴的な紅斑やいちご舌、落屑がみられるとされています。日本小児科学会の資料では、猩紅熱は5〜10歳ころに多く、舌が苺状に赤く腫れ、全身に鮮紅色の発疹が出て、治まった後に剥がれ落ちると説明されています。
経過については、国立感染症研究所(当時)がIDWRで、通常発熱は3〜5日以内に下がり、主症状は1週間以内に消失する予後良好の疾患であると整理しています。年齢は幼児期から学童期の小児に多く、2023年の集計では5歳をピークに3歳から7歳の報告が多いという結果でした。流行の時期は、冬季と、春から初夏の2つのピークが認められています。
「のどが痛い=溶連菌」ではありません
検査で決まるもので、症状だけでは決まりません
厚生労働省の「抗微生物薬適正使用の手引き 第三版」は、急性咽頭炎について次の方針を示しています。
迅速抗原検査又は培養検査でA群β溶血性連鎖球菌(GAS)が検出されていない急性咽頭炎には、抗菌薬投与を行わないことを推奨する。
同じ手引きは、乳幼児(生後3か月以降から小学校入学前)についても「GASを除く急性咽頭炎に対しては抗菌薬を投与しない」と示しています。のどの痛みや発熱があるという事実だけでは、抗菌薬の対象にはならないという整理です。
受診のときに役立つ、見分けの手がかり
同手引きは、GAS咽頭炎とウイルス性咽頭炎の鑑別のポイントを次のように挙げています。
| 挙げられている特徴 | |
|---|---|
| GAS咽頭炎 | 突然発症、発熱、頭痛、嘔気・嘔吐、腹痛、圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹、猩紅熱様皮疹 |
| ウイルス性咽頭炎 | 結膜炎、咳嗽、嗄声、鼻汁、筋肉痛、下痢 |
咳や鼻水がはっきり出ているときは、ウイルス性の側の特徴に寄ります。逆に、咳や鼻水が目立たないまま急にのどが痛くなり、熱が出て、おなかを痛がる、首の前側を触ると痛がる、といった組み合わせは、受診のときに伝える価値のある情報です。
迅速抗原検査を行う目安についても、同手引きは3歳以上(周囲で流行している場合はその限りではない)としています。年齢が低い場合に検査をしない判断があるのは、この目安によるものです。
抗菌薬は10日間──症状が消えても続く理由
厚生労働省の手引きは、GASによる急性咽頭炎と診断した場合の処方を、乳幼児では「アモキシシリン 30〜50mg/kg/日(最大1,000mg/日)分2もしくは分3 内服10日間」、学童期以降の小児と成人では「アモキシシリン内服10日間」と示しています。実際の薬の種類や量は、薬のアレルギーの有無などによって変わるため、処方された内容が家庭ごとに違うのは自然なことです。
熱は数日で下がり、のどの痛みも1週間以内には落ち着いていきます。それでも内服の期間が10日間に設定されているのは、症状を取ることだけが目的ではないためです。日本小児科学会は、この病気について次のように整理しています。
特に注意すべき点は、本症が様々な症状を呈することがあること、合併症として発症数週間後にリウマチ熱、腎炎をおこすことがあることである。
そして猩紅熱の説明のなかで、治療が不十分な場合は、リウマチ熱を併発しやすいとしています。腎炎は発症数週間後に血尿で見つかることが多いとも書かれています。つまり、飲みきる期間は「今の症状のため」ではなく「数週間先のため」に置かれた期間だと理解しておくと、途中でやめる判断になりにくくなります。
薬が余った、飲ませ忘れた、途中で吐いてしまったといった場合は、自己判断で調整せず、処方元の医療機関か薬剤師に確認してください。
登園・登校はいつから
学校の場合
溶連菌感染症は、学校保健安全法施行規則で個別に日数が定められている第二種の感染症とは異なります。JIHSは、学校保健安全法では条件によっては第三種感染症の「その他の感染症」に定められているとしています。第三種の出席停止の期間の基準は「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」です。インフルエンザのような「発症した後◯日」という数え方の規定は置かれていません。
その判断のよりどころとして、日本小児科学会は登校(園)基準を次のように示しています。
適切な抗菌薬による治療開始後24時間以内に感染力はなくなるため、それ以降、登校(園)は可能である。
起点は解熱ではなく、抗菌薬を飲み始めた時点です。
保育所の場合
こども家庭庁の「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」は、溶連菌感染症を「医師の診断を受け、保護者が登園届を記入することが考えられる感染症」に分類し、感染しやすい期間を「適切な抗菌薬治療を開始する前と開始後1日間」、登園のめやすを次のように示しています。
抗菌薬内服後24〜48時間が経過していること
インフルエンザや麻しんなどが「医師が意見書を記入することが考えられる感染症」の側に置かれているのに対し、溶連菌感染症は保護者が記入する登園届の側です。ただし同ガイドラインは、意見書・登園届は一律に作成・提出が必要となるものではなく、各保育所が市区町村の支援の下、地域の医療機関などと協議して取扱いを決めるとしています。園によって求められる書類や日数の運用が違うのは、この仕組みによるものなので、通っている園の案内を確認するのが確実です。
あわせて、登園のめやすは全身状態が良好であることが前提になります。24時間が過ぎていても、食事や水分が入らない、ぐったりしているといった状態であれば、日数とは別の判断になります。
家庭内で広げないために
感染経路は飛沫感染と接触感染です。こども家庭庁のガイドラインは、飛沫が飛び散る範囲を1〜2mとしたうえで、A群溶血性レンサ球菌を飛沫感染する主な病原体に挙げ、同時に「咽頭炎等の原因である溶血性レンサ球菌」を、接触感染によって拡がりやすく特に注意する必要がある病原体としても挙げています。同ガイドラインは、接触感染への最も重要な対策を手洗い等により手指を清潔に保つことだとし、タオルの共用を避けることも求めています。
厚生労働省の手引きも、患者・家族への説明に含める内容の例として「感染拡大防止のため手洗いを徹底、家族とタオルを共有しない」を挙げています。療養している数日間だけでも、タオルを個別にする、あるいはペーパータオルに替えると管理しやすくなります。
JIHSは、この病気は家庭や学校での集団感染が多いとし、予防として患者との濃厚接触を避けること、手洗いや手指消毒の励行、マスクを用いた咳エチケットを挙げています。きょうだいがのどの痛みや発熱を訴えた場合は、同じ検査の対象になり得ることを念頭に受診を検討してください。
受診・再受診を考える場面
治療を始めたあとも、次のような変化があれば相談の対象になります。
- 抗菌薬を飲み始めて数日たっても熱が下がらない、のどの痛みが強いまま続く
- 水分がほとんど入らない、おしっこの回数がはっきり減った(赤ちゃんの水分補給)
- 治ったと思ってから数週間後に、尿の色が赤い・茶色い、まぶたや足がむくむ、体重が急に増える
- 同じ時期に、関節の痛みや腫れ、原因のはっきりしない発熱が続く
後半の2つは、日本小児科学会が挙げている発症数週間後の腎炎・リウマチ熱に対応する場面です。受診の際は、いつ溶連菌と診断され、抗菌薬をいつからいつまで飲んだかを伝えられるようにしておくと、経過が伝わりやすくなります。
発熱そのものへの家庭での対応は赤ちゃんの発熱、けいれんを伴う場合は熱性けいれんで整理しています。耳を痛がる場合は子どもの急性中耳炎も参考になります。
まとめ
- 診断は迅速抗原検査または培養検査によります。検査で検出されていない急性咽頭炎に抗菌薬を投与しないことが、厚生労働省の手引きで推奨されています
- 内服は10日間が示されています。症状が消えたあとの期間は、発症数週間後のリウマチ熱・腎炎を見据えて置かれたものです
- 登校(園)の起点は解熱ではなく抗菌薬の治療開始。日本小児科学会は治療開始後24時間以降を可能としています
- 保育所の登園のめやすは抗菌薬内服後24〜48時間。溶連菌感染症は保護者が記入する登園届の側に分類されていますが、運用は園により異なります
- 感染経路は飛沫と接触。手洗いとタオルを共用しないことが、家庭でできる基本です
- 治ったと思ってから数週間後の血尿・むくみ・関節の痛みは、受診を検討する場面です
参考にした資料
- 厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課「抗微生物薬適正使用の手引き 第三版」ダイジェスト版(令和6年8月発行)
- 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会「学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説」2025年4月改訂版(溶連菌感染症の項)
- こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」別添4 医師の意見書及び保護者の登園届(表9)/別添1・本文の感染経路別対策
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト「A群溶血性レンサ球菌感染症」(2025年4月28日更新)
- 国立感染症研究所感染症疫学センター「IDWR 2023年第43号<注目すべき感染症> A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」
- 学校保健安全法施行規則(昭和33年文部省令第18号)第18条・第19条
Dr.つのみ|臨床系専門医が執筆・監修しています。
免責事項:本記事は、公的機関の資料および学会の見解にもとづく一般的な情報の整理であり、個別の医療相談や診断・治療の代替となるものではありません。お子さんの症状、検査や抗菌薬の要否、内服の期間、登園・登校の可否については、必ず診察を受けた医師および通っている園・学校の指示に従ってください。記載内容は2026年9月時点で確認できた情報にもとづいています。制度や基準は改正されることがあります。
