授乳中の風邪・体調不良|授乳は続けてよい?受診の目安まで【2026年版】

「授乳中に風邪をひいたら、赤ちゃんにうつさないよう授乳をやめたほうがいい」「授乳中はどんな薬も飲めないから、つらくても我慢するしかない」と言われることがあります。一方で、国立成育医療研究センターは、母乳を介してうつる病気はごく限られること、そして授乳中でも比較的安全に使えると考えられる薬を整理して公開しています。この記事では、授乳を続けてよいかの考え方、使える薬と避けたい薬の分け方、そして受診の目安を、公的機関や専門家の情報をもとに整理します。

結論から:授乳は基本的に続けてよい

先に、大切なところをまとめておきます。

  • 風邪やインフルエンザ、胃腸炎など多くの感染症は、母乳を介して赤ちゃんにうつるわけではないとされています。HIVやHTLV-1といったごく一部のウイルスを除き、授乳を中断する必要はないと案内されています。
  • 授乳中でも比較的安全に使えると考えられる薬は、国立成育医療研究センターなどが一覧として整理・公開しています。「授乳中はすべての薬がだめ」というわけではありません。
  • つらい症状をひとりで我慢する必要はなく、医師や薬剤師に「授乳中である」と伝えて相談するのがすすめられています。
  • ただし、高熱が続くときや、乳房の強い痛み・腫れがあるときは、別の対応が必要なこともあります。受診の目安は後半で整理します。

つまり、授乳中の風邪は「授乳をやめる」よりも、「授乳を続けながら、体調そのものを整える」という考え方が基本になります。

なぜ授乳を続けてよいのか

母乳を介してうつる病気は限られている

風邪やインフルエンザは、多くの場合、せきやくしゃみによる飛沫や、手を介した接触で広がります。母乳そのものを通じて赤ちゃんにうつるわけではない、と国立成育医療研究センターや助産師による解説で説明されています。母乳を介した感染に注意が必要なのはHIVやHTLV-1などごく一部で、一般的な風邪や胃腸炎はこれにあたりません。

そのため、「うつしたくないから授乳をやめる」という判断は、多くの場合は必要ないとされています。むしろ気をつけたいのは、抱っこや至近距離でのせき・くしゃみといった飛沫や接触のほうです。

母乳には赤ちゃんを守る成分が含まれるとされる

母乳には、母親がこれまでに作ってきた抗体(分泌型IgAなど)が含まれ、赤ちゃんの粘膜を守る働きがあると説明されています。母親が風邪をひいたときも、授乳を続けることで、こうした成分が赤ちゃんに届くと考えられています。この点からも、体調が許す範囲で授乳を続けることには意味があるとされています。

ここで「効く」「防げる」と断定はできませんが、少なくとも「風邪をひいたら母乳をやめるべき」という前提は、医学的な情報とは一致しないと整理できます。

授乳中の薬の基本的な考え方

「授乳中は薬を飲めない」という思い込みは根強いのですが、実際には整理された情報があります。

ほとんどの薬は母乳に移るが、量はごくわずか

国立成育医療研究センターの解説では、多くの薬は母乳中へ移行するものの、その量は非常に少なく、赤ちゃんに影響する可能性は低いものが多い、とされています。同センターは「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」と「授乳中の治療に適さない薬」を一覧として公開しており、迷ったときの拠りどころになります。

大切なのは、自己判断で「飲めない」と決めつけて我慢することでも、逆に確認せずに何でも飲むことでもなく、授乳中であることを伝えたうえで、医師・薬剤師に確認するという手順です。

熱や痛みには

授乳中の解熱鎮痛薬としては、アセトアミノフェンがよく挙げられます。妊娠中から授乳中まで比較的使いやすい薬として紹介されることが多い成分です。加えて、イブプロフェンやロキソプロフェンも、国立成育医療研究センターが公表する「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」に含まれており、母乳への移行が少ないとされています。イブプロフェンは、痛みや腫れをおさえる働きから、乳腺炎の際にも用いられることがあると説明されています。

なお、インフルエンザが疑われるときの解熱には、アセトアミノフェンを選ぶよう案内されることが多い点も知っておくと役立ちます。どの薬を選ぶかは体調や既往によって変わるため、最終的な判断は医師・薬剤師に確認してください。

せきや鼻の症状には

せき止めの中でも、コデイン(コデインリン酸塩など)を含むものは注意が必要とされています。まれに赤ちゃんが眠りがちになる、呼吸が浅くなるといった影響が報告されており、特に生後1か月未満の新生児や早産児では避けたほうが無難と説明されています。

また、麻黄(まおう)を含む一部の漢方薬も、授乳中はなるべく避ける方向で案内されることがあります。市販のせき止めや鼻炎薬は複数の成分が混ざっていることが多いため、成分を自分だけで判断するのは難しいものです。購入時に薬剤師へ相談すると安心です。

市販薬を選ぶときの注意点

体調がつらいとき、まず市販薬で対応したいという場面もあります。授乳中に市販薬を使うときは、次の点を意識すると選びやすくなります。

  • 薬剤師に「授乳中」と伝える:ドラッグストアで購入する際に一言伝えるだけで、避けたほうがよい成分を確認してもらえます。
  • 総合感冒薬より、症状に合った単剤を検討する:たくさんの成分が入った総合感冒薬より、熱なら解熱鎮痛薬、というように、必要な症状に絞った薬のほうが、含まれる成分を把握しやすくなります。
  • 用法・用量を守る:添付文書に書かれた回数・量を守ることが基本です。「早く治したいから多めに」は避けます。
  • 症状が長引くときは受診に切り替える:市販薬で数日みても改善しないときは、医療機関の受診を検討します。

「授乳中でも使える薬はある」ことと、「何でも自由に飲んでよい」ことは違います。整理された情報を、専門家に確認しながら使うのが安全です。授乳中の薬について、より広く知りたい方は授乳中の薬の基本もあわせてご覧ください。

こんなときは受診を

多くの風邪は、休養と水分で回復に向かいますが、次のような場合は医療機関への相談・受診がすすめられています。

  • 高い熱が続く:目安として37.5℃以上の発熱が続くときや、数日たっても下がらないとき。
  • 乳房の痛み・熱感・腫れをともなう発熱:これは風邪ではなく、乳腺炎のサインのことがあります。乳房の一部が赤く腫れて痛む、しこりがある、悪寒をともなう発熱がある、といった場合は、母乳外来や助産院、乳腺外科などへの相談がすすめられています。
  • 息苦しさ・強いのどの痛み・ぐったりするなど、症状が重いと感じるとき。
  • 市販薬で数日みても改善しないとき。

なお、乳腺炎が疑われる場合でも、授乳自体は続けたほうがよいとされることが多い点は知っておくと安心です。赤ちゃんが欲しがるタイミングで、母親が楽な姿勢で授乳を続けることが、たまった母乳を出すことにつながると説明されています。ただし対応は状態によって異なるため、自己判断でマッサージなどを続けず、早めに専門家へ相談してください。

うつさない・こじらせないための工夫

授乳を続けながら、家庭内での広がりをおさえ、体を回復させるための工夫も整理しておきます。

  • 手洗い:授乳やお世話の前に手を洗うことが、接触による広がりをおさえる基本です。
  • せき・くしゃみのときの配慮:赤ちゃんの顔の近くでのせき・くしゃみを避け、必要に応じてマスクを使います。
  • 休養を優先する:体力の回復には睡眠と休息が欠かせません。家事や上の子のことも含め、家族に頼れるところは頼る前提で組み立てます。
  • 水分をこまめにとる:発熱や授乳で水分が失われやすいため、こまめな水分補給を意識します。

「母親が無理をして早く動くこと」より、「回復を優先して体を休めること」のほうが、結果的に家庭全体にとって負担が少ないことが多いものです。すべてを完璧にこなそうとしなくて大丈夫です。

よくあるご質問

Q. 熱があるあいだは、母乳をやめて粉ミルクにしたほうがよいですか?
多くの風邪では、熱があっても授乳を続けてよいとされています。母乳を介して赤ちゃんに病気がうつるわけではないと案内されているためです。体力的につらいときにミルクを併用するのは選択肢のひとつですが、「熱があるから母乳はだめ」という理由での中断は、基本的には必要ないと整理されています。

Q. 薬を飲んだら、飲んだ直後の母乳は搾って捨てたほうがよいですか?
授乳中に使える薬として案内されているものは、母乳への移行が少ないと考えられています。そのため、多くの場合は搾って捨てる必要はないとされていますが、薬の種類によって考え方が変わることもあります。処方や購入の際に、医師・薬剤師へ確認するのが確実です。

Q. 予防のために、家族もマスクや手洗いをしたほうがよいですか?
家庭内での広がりをおさえるうえで、手洗いや、せき・くしゃみのときの配慮は役立つとされています。赤ちゃんに直接触れる機会が多い時期ほど、家族みんなで基本的な対策を共有しておくと安心です。

まとめ

授乳中の風邪や体調不良は、「授乳をやめる」ことより「体調を整えながら授乳を続ける」ことが基本の考え方です。母乳を介してうつる病気はごく一部で、授乳中でも使える薬は公的機関が整理して公開しています。つらい症状は我慢せず、授乳中であることを伝えて医師・薬剤師に相談し、高熱が続くときや乳房の強い痛みがあるときは早めに受診してください。妊娠中の風邪・咳については妊娠中の風邪・咳のケアもあわせてご覧ください。

Dr.つのみ|臨床系専門医が執筆・監修しています。


免責事項
この記事は、公的機関や専門家が公開している情報をもとに、一般的な考え方を整理したものです。特定の薬の使用可否や、個々の症状への対応を示すものではなく、診断・治療・医療相談の代わりになるものではありません。実際の判断は、体調やお子さまの状態を確認できるかかりつけの医師・薬剤師にご相談ください。

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