妊娠中のチーズ|食べてよいもの・避けたいものをリステリア対策で医師ママが整理【2026年版】

まずお伝えしたいこと

「妊娠中、チーズは食べていいの?」——これは、妊娠がわかってから多くの方が一度は調べるテーマだと思います。実際に検索してみると、「チーズは避けたほうがいい」と書いてあるページもあれば、「種類を選べば大丈夫」と書いてあるページもあり、情報量が多くてかえって迷いやすいところです。チーズトーストやピザ、サラダにのったチーズを前にして、ふと手が止まってしまう——そうした声は少なくありません。

医学的な情報を整理しても、目の前の一皿に手をのばすかどうかは、迷いやすいものです。だからこそ、このサイトでは「チーズはだめ」と力むのではなく、なぜ一部のチーズに気をつける必要があるのかを理解し、自分で選べる材料をお渡しすることを大切にしています。妊娠中のチーズも、ポイントを分けてみると、思っているより整理しやすくなります。

結論先出し

先に要点をまとめます。

  • 妊娠中にチーズを食べること自体を、公的機関は一律に禁止していません。 気をつけたいのは「リステリア」という細菌で、注意の中心になるのは加熱殺菌していないナチュラルチーズです。
  • 避けたいチーズ:カマンベール、ブルーチーズ、ブリーなど、加熱殺菌していない輸入の柔らかいナチュラルチーズ(白カビ・青カビタイプなど)。
  • 比較的安心して選びやすいチーズ:プロセスチーズ(スライスチーズ・6Pチーズなど)、加熱殺菌した乳から作られたチーズ、そして加熱して食べるチーズ(ピザ、グラタン、チーズトーストなど)。
  • 日本国内で製造・流通しているチーズは、原料乳の殺菌が法律で定められているため、過度に心配する必要はないと考えられています。
  • 迷ったときは、「非加熱のまま食べる柔らかいナチュラルチーズかどうか」「加熱してあるかどうか」の2点を見れば、おおよそ判断できます。

以下で、理由と具体的な見分け方を順に見ていきます。

なぜ妊娠中のチーズが話題になるのか——「リステリア」の話

妊娠中のチーズが話題になる背景には、リステリアという細菌があります。リステリアは、加熱していない食品や、食べるときに加熱を必要としない調理済み食品で増えることがある細菌です(食品安全委員会、厚生労働省)。

妊娠中は、免疫のはたらきの変化により、リステリアに感染しやすくなることが知られています。感染した場合、おなかの赤ちゃんに影響が及ぶことがあるため、妊娠中はとくに注意がすすめられる細菌です。リステリアには、もうひとつ知っておきたい性質があります。それは、4℃以下の低い温度でも増えることがあるという点です。つまり、冷蔵庫に入れておけば安心、とは言いきれません。一方で、リステリアは加熱すれば死滅するとされています。この「冷蔵では増えうるが、加熱には弱い」という性質が、チーズの選び方を考えるうえでの土台になります。

公的機関が「妊娠中は避けたい食品」として挙げているのは、チーズだけではありません。スモークサーモン、生ハム、肉や魚のパテなど、非加熱のまま日もちさせる加工品が同じグループに入ります。チーズも、この「非加熱のまま食べる加工品」という観点から注意がうながされている、と理解すると、全体像がつかみやすくなります。

避けたいチーズ:加熱殺菌していないナチュラルチーズ

注意の中心になるのは、加熱殺菌していないナチュラルチーズです。具体的には、次のようなタイプが挙げられます。

  • 白カビタイプ:カマンベール、ブリーなど
  • 青カビタイプ:ブルーチーズ、ゴルゴンゾーラ、ロックフォールなど
  • ウォッシュタイプ:表面を塩水などで洗って熟成させた柔らかいチーズ
  • フレッシュタイプの一部:加熱殺菌していない乳から作られたフェタチーズなど

これらは水分が多く柔らかいものが多く、製造の過程で加熱の工程がないため、リステリアが残っていた場合に増えやすいと考えられています。とくに海外で製造された輸入品には、加熱殺菌していない乳を使ったものがあるため、妊娠中は控えるか、後述のように加熱してから食べるのが無難です。

ただし、これは「これらのチーズが必ず危険」という意味ではありません。あくまで、もしもリステリアがいた場合にリスクが高まりやすいタイプとして、妊娠中は念のため避けたい、という整理です。

比較的安心して選びやすいチーズ

一方で、妊娠中も比較的安心して選びやすいチーズもあります。

① プロセスチーズ

スライスチーズ、6Pチーズ、ベビーチーズなど、いわゆるプロセスチーズは、ナチュラルチーズを砕いて加熱して溶かし、殺菌してから成型したものです。製造の過程で加熱されているため、リステリアの観点では安心して選びやすいチーズです。

② 加熱殺菌した乳から作られたチーズ

クリームチーズや、加熱殺菌した乳から作られたモッツァレラ、カッテージチーズなどは、原料の乳が殺菌されています。日本国内で広く流通しているこれらの製品は、過度に心配する必要はないと考えられています。

③ 加熱して食べるチーズ

そして、いちばん覚えておきたいのが、加熱すればリステリアは死滅するという点です。ピザ、グラタン、チーズトースト、チーズタッカルビ、チーズフォンデュなど、しっかり火を通したチーズであれば、もとがナチュラルチーズであっても、この観点では安心して食べられます。「中心までしっかり熱くなっている」状態が目安です。カマンベールも、焼きカマンベールのように加熱すれば選択肢に入ってきます。

日本国内のチーズは過度に心配しなくてよい理由

「では、スーパーで売っているナチュラルチーズも全部だめなの?」と不安になる方もいるかもしれません。ここで知っておきたいのが、日本国内のルールです。

日本では、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(いわゆる乳等省令)によって、チーズの原料となる乳を殺菌することが定められています。そのため、日本国内で製造されたナチュラルチーズは、加熱殺菌した乳から作られていることになり、海外で報告されているような非加熱乳によるリスクとは事情が異なります。国内で製造・流通しているチーズについては、過度に神経質になる必要はないと考えられています。

注意したいのは、おもに輸入された非加熱のナチュラルチーズや、製造方法が確認できない手作りのチーズなどです。パッケージの表示で迷ったときは、「加熱食肉製品」のように、「加熱」と書かれているかを確認する、ナチュラルチーズかプロセスチーズかを確認する、といった見方が手がかりになります。妊娠中は、普段は加熱しないで食べる食品も、できるだけ加熱して食べることが、いちばんシンプルで確実な対策です。

チーズを選ぶときの早見メモ

ここまでをふまえて、迷ったときの目安を整理します。あくまで一般的な参考としてご覧ください。

比較的選びやすい

  • プロセスチーズ(スライス、6P、ベビーチーズなど)
  • クリームチーズ、加熱殺菌乳のモッツァレラ・カッテージチーズ
  • 加熱して食べるチーズ料理(ピザ、グラタン、チーズトーストなど)

妊娠中は控えるか、加熱してから

  • 輸入の白カビチーズ(カマンベール、ブリーなど)
  • 青カビチーズ(ブルーチーズ、ゴルゴンゾーラなど)
  • ウォッシュタイプ、非加熱乳のフェタチーズなど

判断の軸

  • 「非加熱のまま食べる柔らかいナチュラルチーズか?」
  • 「しっかり加熱してあるか?」

この2点を確認するだけで、ほとんどの場面で見当がつきます。チーズと同じ「非加熱の加工品」グループにあたる生ハム・スモークサーモンなどについては、妊娠中に食べてよいもの・避けたいものの一覧にまとめて整理しています。

もし食べてしまって心配になったとき

「妊娠に気づく前に、カマンベールを食べてしまった」「外食でブルーチーズのサラダを食べた気がする」と、あとから心配になることもあると思います。まず知っておきたいのは、リステリアによる食中毒は、もともとまれなものだということです。注意がすすめられているのは、リスクをできるだけ下げるための備えであって、一度口にしたら必ず何かが起こる、という話ではありません。

そのうえで、生のナチュラルチーズなどを食べたあとに、発熱、悪寒、筋肉痛、強い倦怠感、吐き気や下痢などの症状が出た場合は、念のため早めにかかりつけの産婦人科に相談してください。リステリアの症状は、軽いかぜのような形で出ることもあるとされています。妊娠中は自己判断で市販薬を使わず、気になる症状が続くときは、ためらわず医療者に相談するのが安心です。

まとめ

妊娠中のチーズは、「全部だめ」でも「全部大丈夫」でもなく、リステリアという細菌の観点から、種類と食べ方を分けて考えると整理しやすくなります。注意の中心は、加熱殺菌していない輸入の柔らかいナチュラルチーズ(カマンベール、ブルーチーズなど)です。一方で、プロセスチーズや、加熱殺菌した乳から作られたチーズ、そして加熱して食べるチーズであれば、過度に神経質になる必要はないと整理できます。日本国内のチーズは原料乳の殺菌が定められているため、輸入の非加熱品ほど心配はいりません。

「妊娠したからチーズはあきらめなきゃ」と力みすぎなくて大丈夫です。種類と加熱のポイントを押さえれば、食べたいものを上手に選びながら、長い妊娠期間を心地よく過ごす工夫につながります。妊娠中の食事全体については、妊娠中の食事で本当に気をつけたいものもあわせてご覧ください。


Dr.つのみ|臨床系専門医が執筆・監修しています。

免責事項:本記事は、妊娠中の食事に関する一般的な情報を、公的機関の資料をもとに整理したものです。医療上の診断・治療や個別の指導に代わるものではありません。体調や持病、妊娠経過には個人差があります。食事や症状について不安がある場合は、自己判断せず、かかりつけの産婦人科医・助産師などの医療者にご相談ください。記載内容は公開時点の情報にもとづいています。

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