未就学児の予防接種スケジュール|就学前に「何を・いつ」打つかを最新の定期接種一覧でやさしく整理【2026年版】

母子手帳の予防接種のページをはじめて開いたとき、欄の多さに圧倒された——そんな声をよく見かけます。種類が多く、回数もまちまちで、「全部をきちんと、決められたとおりに打たせなければ」と気が張ってしまう方は少なくないと思います。

けれど、予防接種のスケジュールには、ちゃんとした順番と理由があります。赤ちゃんが病気にかかりやすくなる時期の前に、必要な分を届けられるように組み立てられています。そして、もし時期が前後しても、後から取り戻せる道(キャッチアップ)が用意されていることがほとんどです。

この記事では、未就学児(0歳から小学校に上がるまで)の予防接種を、最新の定期接種の枠組みにそって「何を・いつ・何回」という形に整理します。完璧に覚える必要はありません。全体像をつかんでおけば、かかりつけの小児科や自治体からの案内を、落ち着いて読めるようになります。

この記事は情報提供を目的とした基礎知識のまとめです。お子さんごとの具体的な接種の可否・時期・順番は、母子健康手帳の記録、お住まいの自治体からの通知、そしてかかりつけの小児科医の判断にしたがってください。


まず結論:就学前の予防接種は「0歳に集中→1歳でもう一山→就学前にもう一度」

未就学児の予防接種は、ざっくり次の3つの山に分けて考えると見通しが立ちます。

ひとつめは、生後2か月から始まる「0歳の山」。ここに最も多くの種類が集まります。ふたつめは、1歳の誕生日を迎えてから受ける「1歳の山」。みっつめは、小学校に上がる前の1年間(年長さんにあたる学年)に受ける「就学前の山」です。

この3つの山を押さえておけば、間にある追加接種も、案内が来たときに「ああ、あの山の続きだな」と位置づけられます。以下で、それぞれの中身を順に見ていきます。

なお、予防接種には、対象年齢の間であれば公費(無料)で受けられる「定期接種」と、ご家庭の希望で受ける「任意接種」があります。任意接種にも自治体によって費用の助成がある場合があるため、案内をあわせて確認すると安心です。


0歳の山:生後2か月から始まる、いちばん種類が多い時期

赤ちゃんは、お母さんからもらった抵抗力(移行抗体)が生後数か月で少しずつ減っていきます。その前に必要な接種を届けられるよう、定期接種の多くは生後2か月から始まります。「2か月になったら、かかりつけの小児科でスケジュールの相談を」と覚えておくと、出遅れにくくなります。

生後2か月ごろから始まる主な定期接種は、次のとおりです。いずれも、それぞれの病気の発症や重症化を防ぐことを目的に、国の定期接種に位置づけられています。

ワクチン(守る対象) 標準的な開始時期 回数の目安
ロタウイルスワクチン(乳児の重い胃腸炎に対するもの・飲むタイプ) 生後2か月〜(初回は生後14週6日までの開始が目安) 種類により2回または3回
B型肝炎ワクチン(B型肝炎ウイルスに対するもの) 生後2か月〜 3回(標準は2か月・3か月・7〜8か月)
小児用肺炎球菌ワクチン(細菌性髄膜炎・肺炎などに対するもの/現在は15価・20価) 生後2か月〜 初回3回+追加1回(追加は1歳以降)
5種混合ワクチン(ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ・ヒブの5つをまとめたもの/DPT-IPV-Hib) 生後2か月〜 初回3回+追加1回
BCGワクチン(結核に対するもの) 生後5〜8か月(1歳の誕生日前まで) 1回

この時期に知っておくと気持ちがらくになる点を、3つ補足します。

ひとつは、5種混合ワクチンについてです。これは、これまで別々だった4種混合(ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ)とヒブのワクチンを1本にまとめたもので、2024年4月から定期接種で使えるようになりました。1本化されたことで、赤ちゃんに必要な通院や接種の回数が減っています。お住まいの地域や生まれた時期によっては、従来の組み合わせで案内されることもあるため、母子手帳と自治体の通知を基準にしてください。

ふたつめは、同じ日に複数のワクチンを受ける「同時接種」です。0歳の山では種類が多いため、同時接種が標準的な進め方として案内されることがよくあります。同時接種の組み合わせや本数は、かかりつけの小児科医が、赤ちゃんの体調やスケジュールを見て判断します。「一度にたくさんで大丈夫かな」と感じたら、遠慮なく医師に質問して構いません。

みっつめは、飲むタイプのロタウイルスワクチンには開始時期の上限があることです。初回の開始が遅れると受けられなくなる場合があるため、生後2か月の相談のときに、あわせて確認しておくと安心です。


1歳の山:誕生日を迎えたら、早めに受けたいもの

1歳の誕生日は、予防接種にとってひとつの区切りです。1歳になると新しく受けられるようになるものがあり、なかでも早めに、と案内されるのが次の2つです。

MR(麻しん・風しん混合)ワクチンの1期は、1歳になったらできるだけ早く1回受けることが勧められています。麻しん(はしか)と風しんの2つに対するワクチンを、1本にまとめたものです。

水痘(みずぼうそう)ワクチンは、1歳から、3か月以上の間隔をあけて2回受けます。

このほか、おたふくかぜ(ムンプス)ワクチンがあります。こちらは定期接種ではなく任意接種ですが、1歳で1回目を受けることが勧められることが多いワクチンです。費用の助成があるかどうかは自治体によって異なるため、案内を確認してみてください。

また、0歳の山で受けてきた肺炎球菌ワクチンや5種混合ワクチンの追加接種(4回目にあたるもの)も、1歳前後の時期に入ってきます。「1歳になったら、初回シリーズの仕上げと、新しく始まるものが重なる」と捉えておくと、案内が届いたときに整理しやすくなります。


3歳ごろ:日本脳炎ワクチンが加わる

少し間があいて、3歳ごろになると日本脳炎ワクチンが始まります。第1期は3歳で2回(初回)受け、4歳で1回(追加)受けます。その後、第2期を9歳以降に受けるため、就学前に完了するのは第1期までです。

なお、定期接種としては生後6か月から受けられますが、標準的にはこの3歳からの時期に始めます。流行のある地域などでリスクが高い場合に、早めの接種が勧められることがあるため、その際は案内にしたがってください。

3歳・4歳の時期は、0歳・1歳に比べると接種の本数が落ち着きます。一方で、間隔があくぶん「次にいつ受けるんだったか」を忘れやすい時期でもあります。母子手帳の記録を時々見返しておくと、抜けに気づきやすくなります。


就学前の山:小学校に上がる前の1年間に受けるもの

最後の山は、小学校入学の前の1年間です。これは、年長さんにあたる学年の4月1日から、翌年の3月31日まで(入学の直前まで)の期間を指します。

この時期の中心は、MR(麻しん・風しん混合)ワクチンの2期です。1歳のときに受けた1期に続く2回目で、就学前の1年間に1回受けます。対象期間が決まっているため、年度内に受けそびれないよう、年度のはじめに案内が届いたら早めに予定を立てておくと安心です。

あわせて勧められることが多いのが、おたふくかぜ(ムンプス)ワクチンの2回目(任意接種)です。1歳で1回目を受けている場合、ちょうどこの就学前の時期が2回目に適した時期にあたります。MR2期と同じ時期になるため、就学前にこの2つをまとめて受ける、という進め方が案内されることがよくあります。

「年長さんの1年間に、MRの2回目とおたふくの2回目」——就学前の山は、この一文で押さえておけば十分です。


2026年の新しい動き:知っておきたい2つの変化

予防接種の制度は、新しい知見や流行の状況にあわせて見直されていきます。2026年の時点で知っておくと役立つ変化を、2つだけ挙げておきます。

ひとつは、小児用肺炎球菌ワクチンで使われる種類が変わってきていることです。従来の13価に代わって、より多くの型をカバーする15価・20価が2024年に導入されました(2024年4月から15価、同年10月からは20価が原則)。お子さんがどの種類で接種を進めているかは、母子手帳の記録で確認できます。

もうひとつは、RSウイルスの母子免疫ワクチンです。これは、妊娠28週から36週ごろの妊婦さんが受けることで、生まれてくる赤ちゃんを生後しばらくのあいだ守ることを目的としたもので、2026年度から定期接種に位置づけられました。受けるのは赤ちゃん本人ではなく妊娠中の方であり、これは産科(産婦人科)で扱う領域になります。妊娠中の方は、かかりつけの産科で相談してみてください。


「自然にかかる方がよい」と聞くけれど——受けるかどうかを考えるための3つの事実

予防接種について調べていると、「人工的なものを、こんなにたくさん入れて大丈夫なのか」「自然にかかった方がよいのではないか」という声に出会うことがあると思います。不安に思うこと自体は、自然なことです。ここでは、その不安を雰囲気ではなく事実で考えられるように、3つの点を医学的に整理しておきます。

事実1:これらの病気は、ワクチンが広まる前、多くの命と健康を奪っていた

「最近は見かけない病気」に思えるものの多くは、なくなったのではなく、ワクチンで抑えられている、というのが実際のところです。

たとえばポリオ(小児まひ)は、日本でも1960年に5,000人以上が発症する大きな流行があり、手足のまひが残ることがありました。この流行は、翌1961年にワクチンを一斉に投与したことで、急速に収まったと記録されています。百日せきも、ワクチンの接種率が下がった時期に患者が大きく増え、乳児を中心に重い合併症や死亡が報告されました。ジフテリアや破傷風も、予防接種が広まるとともに、患者数・死亡数が大きく減ってきました。

つまり、いま私たちがこれらの病気をあまり見ずにすんでいるのは、過去の人たちが積み上げてきたワクチンの効果のうえに立っているから、という側面が大きいのです。

事実2:かかったときの危険は、今も消えていない

「かかっても、たいしたことにはならない」とは、必ずしも言えません。具体例を2つ挙げます。

ひとつは、おたふくかぜ(ムンプス)です。多くは熱と耳の下の腫れで済みますが、一定の割合で「ムンプス難聴」という聞こえの障害が起こることが知られています。日本耳鼻咽喉科学会(福祉医療・乳幼児委員会)の2015〜2016年の全国調査では、2年間で少なくとも359人がムンプス難聴を発症したと報告され、その多くに高度以上の難聴が後遺症として残ったとされています。片方の耳の聞こえを失うことが多く、一度失った聴力は、もとに戻りにくいと報告されています。おたふくかぜワクチンは日本では現在「任意接種」ですが、世界では定期接種にしている国が多いのは、こうした背景があるためです。

もうひとつは、先天性風疹症候群です。風疹そのものは、子どもでは比較的軽く済むことが多い病気です。けれど、風疹に対する免疫のない女性が妊娠の初期(おおむね20週頃まで)に風疹にかかると、おなかの赤ちゃんに、難聴・白内障・心臓の病気(先天性風疹症候群)が起こることがあると、厚生労働省や感染症の専門機関が説明しています。MR(麻しん・風しん混合)ワクチンで風疹にかかりにくくしておくことは、本人を守るだけでなく、将来の妊娠や、周囲の妊婦さんを守る意味も持っています。男の子も含めて受けるのは、そのためでもあります。

事実3:ワクチンの重い副反応は、まれである

ワクチンにも、接種した部位の腫れや、一時的な発熱などの反応は起こりえます。これらの多くは、数日のうちにおさまるとされています。

一方で、アナフィラキシー(強いアレルギー反応)や、脳炎・脳症のような重い副反応は、起こることがあるとしても、きわめてまれです。その頻度はワクチンや症状の種類によって異なります。厚生労働省も、重い副反応が確認される頻度は極めて低いとしています。また、万一、接種によって健康被害が生じた場合に備えた、公的な救済制度も用意されています。

受けることで避けられる病気の危険と、受けることのまれな危険——この2つを並べて比べたとき、公衆衛生の立場では、接種で得られる利益が上回ると整理されています。これらのワクチンが定期接種に位置づけられているのは、その整理にもとづいています。

以上の3点は、「受ける・受けない」を不安や雰囲気で決めるのではなく、事実で考えるための材料です。最終的な判断はご家庭のものですが、迷ったときは、かかりつけの小児科医に、お子さんの状況をふまえて相談してみてください。


スケジュールが乱れても、あわてなくて大丈夫

ここまで「3つの山」で整理してきましたが、現実には、体調をくずしたり、家庭の事情が重なったりして、案内どおりに進まないこともあります。そんなときに覚えておいてほしいことが、3つあります。

ひとつめは、遅れても取り戻せる場合がほとんどだということです。多くのワクチンには、対象年齢の範囲内であれば後から受けられる仕組み(キャッチアップ)があります。「1回逃したらもう終わり」ということは、めったにありません。

ふたつめは、自己判断で順番を組み直さないことです。ワクチンには、間隔や順番に決まりがあるものがあります。乱れてしまったときこそ、かかりつけの小児科医に「ここまで受けて、次どうすればいいか」を相談するのが、いちばんの近道です。母子手帳を持って行けば、医師が記録を見て組み立て直してくれます。

みっつめは、接種前後で気になる症状があれば、ためらわず受診をということです。接種後に高い熱が続く、ぐったりしている、けいれんがある、強いアレルギーのような症状が出た、といった場合は、様子を見すぎず、医療機関に連絡・受診してください。判断に迷うこと自体は、心配しすぎではありません。

予防接種は、本数や回数を「こなす」ことが目的ではなく、お子さんを守るための手段です。スケジュールに追われて気持ちがすり減ってしまうくらいなら、全体像をゆるくつかんで、迷ったらかかりつけ医に頼る——そのくらいの距離感で十分だと、わたしは考えています。


まとめ:就学前の予防接種は「3つの山」で覚える

最後に、もう一度整理します。

未就学児の予防接種は、生後2か月から種類が集まる「0歳の山」、1歳の誕生日から始まる「1歳の山」、そして小学校に上がる前の1年間の「就学前の山」という、3つの山で考えると見通しが立ちます。0歳では同時接種が標準的に案内され、1歳ではMR1期・水痘・各種の追加が、就学前ではMR2期とおたふくの2回目が中心になります。

種類や時期は制度の見直しで変わっていきます。この記事は全体像をつかむための地図として使い、実際の判断は、母子手帳・自治体の通知・かかりつけの小児科医を基準にしてください。地図があるだけで、案内の一枚一枚が、ずいぶん読みやすくなるはずです。

<ご確認のお願い>この記事は一般的な情報提供を目的としています。予防接種の対象年齢・回数・間隔・使用するワクチンの種類は、お住まいの地域や時期によって異なり、制度の見直しで変わることがあります。最新かつお子さんに合った情報は、母子健康手帳、自治体からの通知、かかりつけの小児科医でご確認ください。


参考にした主な情報源

  • 厚生労働省「予防接種・ワクチン情報」「5種混合ワクチン」「子どもの肺炎球菌ワクチン」「B型肝炎ワクチン」「先天性風しん症候群」「ポリオとポリオワクチンの基礎知識」
  • 日本小児科学会「日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール(2026.4.1版)」
  • 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「日本の予防接種スケジュール」「先天性風疹症候群」
  • 日本耳鼻咽喉科学会 ムンプス難聴 全国調査(2015〜2016年)
  • 東京都感染症情報センター「先天性風しん症候群(CRS)」
  • Know VPD!(VPDを知って、子どもを守ろうの会)「予防接種スケジュール」

文:Dr.つのみ|臨床系専門医・産業医/ワーママ・法人経営者

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