離乳食と食物アレルギー|卵など「いつから・どう始める」を医学的に整理【2026年版】

離乳食を始めるとき、「アレルギーが心配だから、卵や小麦などは食べさせる時期を遅らせたほうがいい」と、家庭や周囲で言われることがあります。けれど厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」や日本小児アレルギー学会の提言では、特定の食品を食べ始める時期を遅らせても食物アレルギーになりにくくなるわけではない、と整理されています。この記事では、離乳食と食物アレルギーについて、いつから・どの食品を・どのように始めるとされているのか、そして受診を考える目安を、公的資料に沿ってやさしく整理します。

まず結論から

  • アレルギーを心配して離乳食の開始や特定の食品を遅らせても、食物アレルギーになりにくくなるわけではない、と公的資料では整理されています。
  • 卵は、2019年の改定で「離乳初期(生後5〜6か月ごろ)から、よく火を通した卵黄を少量ずつ」という考え方に変わりました。
  • 湿疹のある赤ちゃんは、荒れた肌からアレルゲンが入り込みやすいと考えられており、スキンケアで肌を整えることが大切とされています。
  • はじめての食材は、体調のよい日の日中に、1種類ずつ少量から。気になる症状が出たら中止して受診します。
  • 始め方に迷うとき、すでに湿疹やアレルギーが疑われるときは、自己判断で進めず、小児科・アレルギー科に相談するのが安心です。

「遅らせたほうが安全」は、今の考え方ではありません

ひと昔前は、アレルギーの心配から、卵・小麦・牛乳などを与える時期をできるだけ遅らせるようにすすめられた時期がありました。そのため、「アレルギーが出たら大変だから、卵は1歳を過ぎてから」と聞いて育った方も多いかもしれません。

けれど、その後の研究の積み重ねで、考え方は大きく変わりました。厚生労働省は2019年、「授乳・離乳の支援ガイド」を約12年ぶりに改定し、最新の知見を反映しています。この改定では、特定の食品の摂取開始を遅らせることに食物アレルギーを避ける効果は認められない、という整理が示されました。むしろ、赤ちゃんの発達に合わせて、決まった時期におかゆなどから離乳食を進めていくことが基本とされています。

この改定にともない、卵黄を始める目安の時期は、以前の生後7〜8か月ごろから、離乳初期(生後5〜6か月ごろ)へと前倒しされました。「アレルギーが心配だから、離乳食そのものを遅らせる」という進め方は、今の公的な考え方には沿っていない、ということになります。

卵は「いつから・どう始める」とされている?

卵は、日本の赤ちゃんでアレルギーの原因となることが比較的多い食品です。そのため「遅らせたほうがよいのでは」と思われがちですが、支援ガイドでは、離乳初期から、進め方に気をつけながら始めていく形が示されています。ポイントは、次のような考え方です。

よく火を通す。卵は、しっかり加熱するとアレルギーの起こりやすさが弱まるとされています。半熟や生ではなく、固ゆでにした状態から始めるのが基本です。

卵白より卵黄が先。アレルギーの原因になりやすい成分は卵白に多いため、まずは固ゆで卵の卵黄から、耳かき1さじほどのごく少量で試します。慣れてきたら少しずつ量を増やし、全卵や卵白へと段階的に進めていきます。

体調のよい日の日中に、1種類ずつ。はじめての食材は、平日の日中など、何かあってもすぐ受診できる時間帯に少量から。新しい食材を一度に複数はじめると、症状が出たときにどれが原因か分かりにくくなります。1日1種類を目安にすると、赤ちゃんの反応を落ち着いて確かめられます。

具体的な量やスケジュールは、赤ちゃんの月齢や湿疹の有無によっても変わります。市販のベビーフードには、月齢に合わせて卵の量を調整しやすい商品もあります。細かな進め方に迷うときは、後述のとおりかかりつけ医に相談すると安心です。

湿疹とスキンケア ── 「肌」から考えるアレルギー

近年、食物アレルギーには「肌」が関係しているという考え方が広く知られるようになりました。荒れた肌のすき間から、食べ物などのアレルゲンが体の中に入り込むと、その食品に対してアレルギーの体質ができやすくなるとされ、これを経皮感作(けいひかんさ)と呼びます。

そのため、生後まもない時期からのスキンケアが大切だと考えられています。乳児湿疹やアトピー性皮膚炎がある場合は、必要に応じて医療機関で治療を受けながら、保湿で肌を整え、なめらかな状態を保つことがすすめられています。肌をきれいに保つことが、その後の食物アレルギーの発症を抑えることにつながる可能性がある、という考え方です。

日本小児アレルギー学会は2017年、湿疹のある赤ちゃんの鶏卵アレルギーについての提言を出しています。その根拠のひとつとなった研究(PETIT study)では、アトピー性皮膚炎のある赤ちゃんの湿疹を治療で落ち着かせたうえで、生後6か月ごろからごく微量の加熱卵を続けたグループで、1歳の時点で鶏卵アレルギーと判定された割合が、卵を除いていたグループより低かったと報告されています。

ただし、これは専門的な医療管理のもとで、湿疹をしっかり治療しながら慎重に行われた方法です。「湿疹があるからこそ、家庭で早めに卵を食べさせたほうがよい」と自己判断するのは避けてください。湿疹のある赤ちゃんの卵の始め方は、必ず小児科・アレルギー科の医師に相談しながら進めることが前提とされています。

アレルギー表示を、確認の味方にする

市販の食品には、アレルギーの表示のしくみがあります。消費者庁は、症状が出る人が多い、または症状が重くなりやすい食品を「特定原材料」と定め、表示を義務づけています。2023年にくるみが追加され、2025年4月からは、えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ)の8品目が対象です。

このほかにも、表示がすすめられている品目(大豆・鶏肉・さけ・やまいも・カシューナッツなど)があります。ベビーフードや加工食品を選ぶとき、原材料表示を見る習慣をつけておくと、はじめての食材を把握しやすく、症状が出たときの手がかりにもなります。

はじめての食材で気をつけたいこと

卵にかぎらず、はじめての食材を試すときの基本は同じです。少量から、1日1種類、体調のよい日の日中に。食べたあとは、しばらく赤ちゃんの様子を見てあげてください。

食物アレルギーの症状は、多くは食べてから数分〜2時間ほどで現れます。口の周りや頬の赤み、じんましん、まぶたの腫れ、繰り返す嘔吐や下痢、せきやゼーゼーした呼吸、機嫌が急に悪くなる、といったサインがみられることがあります。こうした症状が出たときは、その食材をいったん中止し、医療機関を受診してください。受診のときに「何を・どのくらい・いつ食べて・どんな症状が・いつ出たか」をメモしておくと、診察の助けになります。

こんなときは、すぐに受診・救急を

ごく一部ですが、食物アレルギーでは、全身に強い症状が出るアナフィラキシーが起こることがあります。次のようなサインがあるときは、様子を見ずに、すぐ受診または救急(119番)を検討してください。

  • 呼吸が苦しそう、ゼーゼー・ヒューヒューする、声がかすれる
  • 繰り返し吐く、ぐったりして元気がない
  • 全身に広がるじんましん、顔色が悪い、唇が青白い
  • 意識がぼんやりする、呼びかけへの反応が鈍い

判断に迷うときは、小児救急でんわ相談「#8000」も利用できます。軽い赤みだけでも、はじめての食材で不安なときは、無理をせず小児科に相談して構いません。

迷ったら、自己判断で進めないことが安心につながります

ここまで整理してきたのは、あくまで公的資料に沿った一般的な考え方です。実際の進め方は、赤ちゃん一人ひとりの状態によって変わります。とくに、次のような場合は、始める前に小児科・アレルギー科に相談することがすすめられています。

  • 乳児湿疹やアトピー性皮膚炎があり、なかなか落ち着かない
  • きょうだいや家族に食物アレルギーの人がいる
  • すでに、ある食材で気になる症状が出たことがある
  • 進め方に不安があり、家庭だけで判断するのが心配

アレルギーの心配から食品を遅らせる必要はない、という考え方と、一人ひとりに合わせて慎重に進める、という考え方は、矛盾しません。土台となる進め方を知ったうえで、迷いや不安があるときは専門家の手を借りる。それが、赤ちゃんにとっても保護者にとっても、いちばん落ち着いて進められる方法だと考えられます。

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参考にした主な情報源

  • 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」
  • 日本小児アレルギー学会「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言(2017年)」
  • PETIT study(Natsume O ほか, 2017年)
  • 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報(特定原材料等)」

Dr.つのみ|臨床系専門医が執筆・監修しています。


この記事は、公的機関の資料や研究をもとに、一般的な情報を整理したものです。個々の赤ちゃんの診断・治療や、食物アレルギーの具体的な管理・負荷試験に代わるものではありません。気になる症状があるとき、進め方に迷うとき、湿疹やアレルギーの心配があるときは、自己判断せず、小児科・アレルギー科など医療機関にご相談ください。緊急のサインがあるときは、救急(119番)や小児救急でんわ相談「#8000」もご利用ください。

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