子どもの急性中耳炎|「かぜのあと機嫌が悪い・耳を痛がる」を医学的に整理【2026年版】

「中耳炎はプールや耳に水が入るとなる」「耳を痛がったら、すぐに抗菌薬を使う病気」——中耳炎はそんなふうに語られ、夏はプールのせいと考えられることも少なくありません。けれど日本耳科学会などの「小児急性中耳炎診療ガイドライン」では、子どもの急性中耳炎の多くはかぜに続いて鼻の奥から耳へと炎症が広がって起こり、重症度に応じて、すぐに抗菌薬を使わず数日ようすをみる選択肢まで含めて整理されています。この記事では、急性中耳炎がどう起こるのか、耳を「痛い」と言えない赤ちゃんのサイン、受診の目安、治療の考え方、滲出性中耳炎との違い、くり返さないための予防までを、公的資料をもとに整理します。

まず結論:おさえておきたい4つのポイント

  • 多くは「水が入って」ではなく、かぜのあとに起こります。 鼻やのどの炎症が、耳とのどをつなぐ耳管を通って中耳に広がることが主な道すじとされています。
  • 赤ちゃんは痛みを言葉で伝えられません。 かぜのあとの機嫌の悪さ、耳を触る・引っぱる、寝つきの悪さ、耳だれ、発熱などがサインになります。
  • 治療は重症度によって変わります。 軽症では、すぐに抗菌薬を使わず数日ようすをみる選択肢も、小児急性中耳炎診療ガイドラインで示されています。使うかどうかの判断は耳鼻咽喉科・小児科で行われます。
  • くり返す・長引くときは滲出性中耳炎が隠れていることがあります。 痛みが目立たないまま聞こえにくさが続くことがあり、経過の確認が大切です。

受診が必要かどうか、抗菌薬を使うかどうかの最終判断は、お子さんを診た耳鼻咽喉科・小児科の医師にご相談ください。

急性中耳炎とは:かぜと「鼻」から起こる

急性中耳炎は、鼓膜の奥にある「中耳」という空間に、急に炎症や感染が起こる病気です。耳の痛み、発熱、耳だれ(耳漏)などを伴うことがあり、症状が出てから数週間以内のものを急性中耳炎として扱うのが一般的とされています。

起こり方の中心にあるのが「鼻」です。中耳は、のどの奥と「耳管(じかん)」という細い管でつながっています。耳鼻咽喉科の解説やガイドラインでは、かぜやアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などで鼻やのどに炎症があると、そこにいるウイルスや細菌が耳管を通って中耳に達し、急性中耳炎につながると整理されています。

子どもが大人より中耳炎になりやすい理由も、この耳管の形にあります。子どもの耳管は大人に比べて水平で、太く短いため、鼻の奥のウイルスや細菌が中耳に届きやすいとされています。乳幼児で中耳炎が多いのは、体質や不注意の問題ではなく、成長の途中にある体の構造によるところが大きい、という点はおさえておきたいところです。

「プールで水が入ると中耳炎」という誤解

夏になると「プールで耳に水が入ったから中耳炎になった」と語られることがあります。けれど耳鼻咽喉科の解説では、外から耳に入った水そのものは急性中耳炎の主な原因ではないとされています。

理由は構造にあります。ふだん鼓膜は中耳との境を閉じているため、外耳道(耳の穴)に入った水は、鼓膜より奥の「中耳」には届きません。急性中耳炎は、外側の耳の穴からではなく、内側の「鼻・のど」から耳管を通って起こるのが主な道すじです。

一方で、耳の穴に水が入って残ると、外耳道の皮膚に炎症が起こる「外耳炎」につながることはあります。これは中耳炎とは別の場所の病気です。「プールのあと耳を痛がる」ときに、中耳炎なのか外耳炎なのかは見た目だけでは区別が難しいため、痛みや耳だれが続くときは耳鼻咽喉科で診てもらうのが安心です。プールとの関係でいえば、水そのものより、プールの時期に増えるかぜや鼻の炎症のほうが中耳炎には関わりやすい、という整理になります。

症状:耳を「痛い」と言えない赤ちゃんのサイン

急性中耳炎の代表的な症状は、耳の痛み・発熱・耳だれです。言葉で伝えられる年齢なら「耳が痛い」と訴えますが、乳幼児はそれができません。ガイドラインや小児科・耳鼻科の解説では、次のような様子が受診を考える手がかりになるとされています。

  • かぜをひいたあとに、急に機嫌が悪くなる・ぐずりが増える
  • 耳を触る・引っぱる・耳のあたりを気にする
  • 寝つきが悪い、夜中にくり返し泣く(横になると痛みが強くなることがあります)
  • 耳だれ(黄色や白っぽい液)が出ている
  • 発熱を伴う
  • 呼びかけへの反応や、テレビの音量など聞こえの様子が変わったように感じる

とくに、かぜのあとに機嫌の悪さや発熱が続くとき、耳を気にするしぐさがあるときは、中耳炎が隠れていないか一度確認しておくと安心です。夜間の激しい泣きの背景に耳の痛みがあることもあり、赤ちゃんの夜泣きの記事で触れている「泣きの原因を確認する」視点ともつながります。

受診の目安

急性中耳炎は、家庭での見た目だけでは診断がつきません。鼓膜の状態を見て判断するため、次のようなときは耳鼻咽喉科・小児科の受診を検討します。

  • かぜのあとに耳の痛みや発熱が続く、または強くなってきた
  • 耳だれが出た
  • 赤ちゃんが耳を気にして機嫌が悪い状態が続く、夜間にくり返し泣く
  • 聞こえにくそうな様子がある
  • 一度よくなったのに、またぶり返してきた

一方で、次のようなときは、様子を見ずに早めに医療機関へ連絡します。高い発熱でぐったりしている、水分がとれない、けいれんがある、耳の後ろが赤く腫れている・押すと痛がるといった場合です。耳の後ろの腫れや強い痛みは、まれに中耳の炎症が周囲に広がったサインのことがあり、注意が必要とされています。発熱時の受診の考え方は赤ちゃんの発熱の記事にもまとめています。判断に迷うときは、小児救急でんわ相談「#8000」も利用できます。夜間・休日で緊急性が高いと感じるときは、状況に応じて119番も選択肢です。

治療の考え方:重症度で「すぐ抗菌薬」とは限らない

「中耳炎=すぐに抗菌薬」というイメージがあるかもしれませんが、いまの整理は少し異なります。日本耳科学会などがまとめた「小児急性中耳炎診療ガイドライン(2024年版)」では、年齢・症状・鼓膜の所見などから重症度を軽症・中等症・重症に分けて、対応を考える枠組みが示されています。

このガイドラインでは、抗菌薬を使わずに数日間ようすをみることが選択肢になる場面と、抗菌薬を使うことのメリットが大きい場面を区別しています。たとえば軽症では、すぐに抗菌薬を使わず数日間ようすをみて、改善しなければあらためて対応を考える、という進め方が示されています。背景には、抗菌薬を必要な場面に絞って適切に使う「抗菌薬の適正使用」の考え方があります。

痛みや発熱に対しては、症状をやわらげるケア(解熱鎮痛薬など)が使われることもあります。どの薬を使うか、抗菌薬を使うか経過をみるかは、鼓膜の状態を見た医師が判断する領域です。ここでは「必ずしもすぐ抗菌薬ではなく、重症度に応じて判断される」という考え方を知っておくことが大切で、具体的な治療は受診先の耳鼻咽喉科・小児科での相談になります。自己判断で市販薬や以前の処方薬を使い回すことは避けてください。

急性中耳炎と滲出性中耳炎の違い

中耳炎には、急性中耳炎とは別に「滲出性(しんしゅつせい)中耳炎」があります。混同されやすいので整理しておきます。

急性中耳炎は、痛み・発熱・耳だれといった「急な炎症・感染」の症状が前に出ます。一方滲出性中耳炎は、中耳に液がたまっているものの、強い痛みや発熱を伴わないのが特徴とされています。痛みが目立たないため気づかれにくく、耳鼻咽喉科の解説では、子どもの「聞こえにくさ(難聴)」の原因として多いものと位置づけられています。

滲出性中耳炎は、急性中耳炎のあとに続いて起こったり、かぜやアレルギー性鼻炎で耳管の働きが低下して起こったりします。痛がらないので見逃されやすい一方、聞こえにくさが続くと、言葉やコミュニケーションの発達に影響することもあるとされています。「テレビの音が大きい」「呼んでも振り向きにくい」「返事が遅い」などが続くときは、痛みがなくても一度耳鼻咽喉科で確認しておくと安心です。

くり返す・長引くとき

急性中耳炎は、一度かかっても、かぜをひくたびにくり返すことがあります。とくに保育園などの集団生活が始まると、かぜにかかる機会が増えるため、中耳炎もくり返しやすくなる時期があります。

くり返す・長引く背景に、鼻の状態が関わっていることは少なくありません。鼻水が続く、鼻づまりが強い、鼻を強くすする、といった状態があると、耳管の働きが悪くなり、中耳炎が長引いたり再発したりしやすいとされています。中耳炎を「耳だけの病気」と考えず、鼻のケアもあわせて行うことが、経過を落ち着かせるうえで役立ちます。

何度もくり返す、なかなか液が引かない、聞こえにくさが続くといった場合には、鼓膜を小さく切って液を出す処置や、換気のための小さなチューブを入れる方法などが検討されることがあります。これらは耳鼻咽喉科で状態を見て判断される専門的な処置です。くり返しが気になるときは、かかりつけの耳鼻咽喉科で経過を相談してください。

家庭でできること・くり返さないための工夫

急性中耳炎そのものは、家庭のケアだけで対応するものではなく、鼓膜の状態を見た医師の診断と経過観察が中心になります。そのうえで、家庭で意識できることを整理します。

  • 鼻のケアを大切にする。 中耳炎は鼻と深く関わるため、鼻水はためこまず、やさしくかむ・吸ってあげるなどのケアを続けます。強くすすらないよう声をかけることも役立ちます。
  • かぜの予防の基本を続ける。 手洗いなど、日ごろのかぜ対策が、結果的に中耳炎の機会を減らすことにつながります。
  • 受動喫煙を避ける。 タバコの煙は、耳管のはたらきなどに影響し、子どもの中耳炎のかかりやすさ・くり返しやすさと関連することが指摘されています。子どものそばでの喫煙を避けることが望まれます。
  • 予防接種を確認する。 中耳炎の主な原因菌のひとつである肺炎球菌について、小児用肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による中耳炎を減らすことが公的資料で示されています。接種のスケジュールや要否は、未就学児の予防接種スケジュールの記事も参考に、かかりつけの小児科でご確認ください。

なお、授乳のときに寝かせきりにせず少し頭を高くする、といった姿勢の工夫が話題になることもありますが、これらで中耳炎を必ず避けられるわけではありません。基本は「鼻のケア」と「かぜをひいたあとのサインに気づくこと」と考えておくとよいでしょう。夏かぜとの関わりは手足口病の記事でも触れています。

よくある質問

Q. お風呂やプールに入ってもいいですか?
急性中耳炎で耳だれがあるときや、痛み・発熱があるときは、入浴・プールについて医師の指示に従うのが基本です。前述のとおり、外から入った水そのものが中耳炎の主な原因になるわけではありませんが、症状があるときの可否は状態によって異なるため、受診先で確認してください。

Q. 抗菌薬をもらったら、途中でやめてもいいですか?
症状が軽くなっても、処方された抗菌薬は医師の指示どおりに使い切るのが基本とされています。自己判断で中断・調整せず、飲み方に迷ったときは処方した医療機関や薬剤師に相談してください。

Q. 聞こえにくそうですが、痛がっていません。様子見でいいですか?
痛みがなくても、聞こえにくさが続く場合は滲出性中耳炎などが隠れていることがあります。言葉や発達にも関わるため、痛がっていなくても一度耳鼻咽喉科で確認しておくと安心です。

Dr.つのみ|臨床系専門医が執筆・監修しています。


本記事は、公的機関・学会などの資料をもとに一般的な情報を整理したものであり、医療上の診断・治療やかかりつけ医の判断に代わるものではありません。症状の程度やお子さんの状態には個人差があります。気になる症状があるときや判断に迷うときは、自己判断せず、耳鼻咽喉科・小児科などの医療機関にご相談ください。緊急性が高いと感じるときは、小児救急でんわ相談「#8000」や、状況に応じて119番をご利用ください。

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